■ハーブのタイム
地中海沿岸が原産地ですが、世界各地に自生しているシソ科のタイムは、350種類もの品種があります。
一般的にはタイムというと「コモンタイム」をさしますが、その他にも料理に使われる「レモンタイム」などが有名です。
コモンタイムは、料理やクラフトなどにも使われますが、どちらかというと薬効成分が高いのでメディカルハーブとして世界的に有名です。
■タイムの効能
タイムには多くの効能があります。
ですが、タイムの属名Thymus「ティムス」が消毒の意味を持つことからも、その中でも注目すべきは「殺菌・抗菌作用」であることがわかります。
その効果は、病院で消毒に使われるフェノールの20倍もの抗菌力を発揮すると言われています。
このように、殺菌・抗菌力が強いタイムは昔から世界中で使われていました。
例えば、中世ヨーロッパでペストが流行したとき、タイムの枝を焚いて空気を浄化し感染を防いでいたそうです。
また、古代ギリシャでは肌を清め、神経を鎮めるとして浴場で使用されていましたし、古代ローマではタイムの香りにはメランコリーを追い払うとされています。
イギリスではエリザベス朝時代に、ストローイングハーブとしてタイムを床にまき疫病や虫を防いでいました。
当時、悪魔の仕業と考えられていた病気に立ち向かうことから、タイムは勇気の象徴とされ、今なお世界中で愛されているハーブなのです。
●勇気の象徴タイム
中世では、騎士が戦地に赴く際に、恋人や家族は1枚のタイムと蜂蜜の刺繍をしたスカーフを贈る習わしがありました。
これは、当時タイムを「勇気」「行動力」の象徴と考えられていたからといわれています。
恋人や夫が無事に帰ってくる気持ちを込めていたのでしょう。
また、「タイムの香りがする」という言葉は、男性への最高のほめ言葉でもあったようです。
このように殺菌・抗菌作用にすぐれたタイムは、インフルエンザや風邪、咳止め、うがい薬にと活用されています。
ですが、この他にもタイムには優れた強壮作用や老化防止効果、消化を助け、食欲を増進させる消化促進作用などもあり、自然療法として私たちの健康に欠かせないメディカルハーブといえるでしょう。
●タイムの主な効能
抗菌作用、殺菌作用、去痰作用、気管支鎮痙作用、強壮作用、老化防止作用、消化促進作用
■タイムを育ててみよう!
タイムは、実用性はもちろん、一度根付くと一年中収穫を楽しむことが出来るので初心者にはおすすめのハーブです。
また、とても強く香りを放つので、植栽スペースの縁取りとしてわざと踏まれるような場所に植えて香りを生かすのもいいですし、グランドカバーをはじめ、一般的な植え込みや寄せ植えとしても楽しむことができます。
●タイムの種類
タイムはたくさんの品種があります。
その中でも代表的な品種である「コモンタイム」は、小さなやや肉厚な葉をたくさんつけた枝をもち、その葉はスッとした芳香を放ちます。
初夏には小さな花をつけ、料理やクラフト、薬草ハーブとして活用することができます。
また、「レモンタイム」は、その名の通りさわやかなレモンの香りが特徴で、ハーブティーやポプリはもちろんですが、お菓子作りや料理にぜひ活用してもらいたい品種になります。
匍匐性の「ワイルドタイム」は、コモンタイムに似た香り持ち、地面をはうように小花が咲き乱れるのでグランドカバーにして楽しめます。
その他にもラージタイムやマスティックタイムなどもありますので自分にあったタイムを探してみましょう。
■タイムの育て方
日当たりのよい、乾燥した場所と水はけのよい土、風通しの良い場所を好みます。
コンテナ栽培の場合は、底に鉢底石を多めにしてあげると水はけがよくなります。
もともと岩山に自生しているハーブなので高温多湿は苦手です。
そのため密生してきた場所から収穫し、間引いてあげましょう。
暑さ、寒さ、乾燥にも強いので比較的どのような場所でもよく育つので、とても育てやすいハーブです。
神経質にならず、楽しみながら育ててみましょう。
●タイムの増やし方
株分けも可能ですが、株が弱ってしまうこともあるのでタイムは挿し木で増やすのがお勧めです。
挿し木の時期は真夏の時期を避け、春か秋に行うようにします。
地域にもよりますが3月から5月、9月から11月がオススメです。
挿し穂は、元気で若い枝を選びカットするようにしましょう。
また、根付かない場合もあるので少し多めに挿し木をしておくのも良いかもしれません。
初めの1週間は半日蔭で水切れに注意し、その後は直射日光の当たらない日向に出してあげましょう。
約20日で発根してくれます。
●タイムの剪定
タイムは植えたままにすると、どんどん大きく広がってきます。
そうすると通気性が悪く、梅雨になると蒸れて枯れてしまうこともあります。
タイムはどちらかというと、コンパクトで形の良い方が見た目も可愛く、風通しもよいので思い切って春先に剪定をしてあげるようにしましょう。
ただし、剪定をする際は株元に新芽がでていることを確認する必要があります。
下の方に緑の葉がない場合は強めの剪定をするのは止めましょう。
新芽が出ていれば新芽の上の方まで剪定してもかまいません。
また、梅雨前には風通しをよくするために、収穫もかねて全体の3分の1程刈り込んでおくのも効果的です。
秋には枯れた枝を取り除くと、春先には元気な新芽をつけてくれますよ。
■様々なタイムの使い方
タイムは、料理などで臭み消しや防腐、芳香食材として使用されるほか、その強い抗菌力からハーブティーとして咳を抑える薬用ハーブとしても重宝されています。
そこで薬用ハーブの活用法と料理の活用法をいくつか紹介したいと思います。
●薬用ハーブ・タイムの活用法
薬用として使われるのは主に「コモンタイム」とお話ししましたが、レモンタイムやワイルドタイムなども薬用としても活用することは可能です。
ですが、薬効成分が劣るので、薬用の力を存分に活用するのであればコモンタイムをおすすめします。
[ 薬用ハーブの基本・チンキ剤 ]
チンキ剤はハーブをアルコールに浸して薬効成分を抽出する基本的な活用法です。
作り方と活用法を紹介しますが、この他にも様々な使い方が可能です。
アルコールに抽出することで保存期間も約1年あるので常備しておくとよいでしょう。
< 作り方 >
① タイムを収穫し、軽く洗ったら風通しのよい場所につるし乾燥させる
② 煮沸消毒した瓶に、ドライタイムを入れ、ホワイトリカーを注ぎ入れる
( 注意:ハーブが完全にアルコールに浸るようにすること )
③ 常温で2週間熟成させ、ガーゼなど濾して煮沸した瓶に入れ保存する
< チンキ活用法 >
◎ コップ1杯の水に、少量入れうがい薬として使う
◎ 風邪のひきはじめに、ハーブティーに数滴落とし蜂蜜を入れ飲む
(のどが痛い時や咳が出る時におすすめです)
◎ チンキを水で薄めて、除菌スプレーとして使用
◎ 水虫や足の裏の殺菌などに、足浴の中に入れる
[ リンゴ酢で作る・マッサージリンス ]
タイムは、髪を強くするため昔から使用されてきました。
また、リンゴ酢は優れたクレンジング効果と活性作用があり、髪に光沢を与えてくれます。
この2つで作るシンプルなヘアリンスは、フケや抜け毛が気になる頭皮に特に効果を発揮します。
< 作り方 >
① タイムをドライなら瓶の約半分、フレッシュならビンいっぱいにつめます。
② リンゴ酢をしっかりハーブに浸かるように注ぎ入れる
③ 常温で3週間抽出し、ガーゼで濾して保存する
< 使い方 >
① リンスで頭皮をマッサージし、5分間置く。
② ぬるま湯でしっかりすすぎ、いつも通りにシャンプー、リンスをする。
[ アロマ・除菌スプレー ]
タイムのアロマオイル(精油)は、抗菌作用にとても優れています。
トイレの掃除やキッチンのシンクなど気になる場所に吹きかけ、サッとふき取ってあげましょう。
消臭スプレーとしても使うことができます。
① 容器に無水エタノール40mlを入れ、次にタイム精油20滴を入れよく振る。
② 最後に精製水を60ml加えよく振り、混ぜる。
●タイム料理の活用法
ピリッとした刺激が特徴のタイムは、ヨーロッパではなくてはならないハーブの代表でした。
野菜から肉、卵など、どんな食材とも相性がよいので色々な料理に活用してみましょう。
[ タイムソルト ]
ウインナーや肉、魚を焼くときなどに使うと、いつもと違った味わいを楽しめます。
① フライパンで天然塩20gを弱火で乾煎りし、水分を飛ばす
③ ドライタイム2~5g(お好み)をミルなどで細かくし、水分を飛ばした塩と混ぜる
[ 煮込み料理に!ブーケガルニ]
タイム、ローズマリー、ローリエなど好みのフレッシュハーブを束にして、たこ糸などでしっかり縛る。
料理が完成したら取り出しましょう。この他にも、クリームチーズやバターに練り込むなど使い方は様々です。
ピクルスを作る時に入れても風味がよくなるのでおすすめです。
●さいごに
いかがでしょうか?このように、タイムは料理や掃除、ハーブ薬など様々な場面で活用できるハーバルライフには欠かせないハーブのひとつです。
慣れてきたら、自分なりの使い方を見つけていましょう。
関連記事になります。合わせて御覧ください。
・ハーブの寄せ植えや相性のまとめ。初心者の人でも5分で分かるようにハーブ講師が教えます
・ローズマリーの効能、種類、育て方、挿し木、剪定、増やし方、使い方などまとめました
・ハーブ・ミントの効能と効用。メディカルハーブやネズミ除けにもオススメ!
・ハーブ・カモミールの効能。カモミールティーにはリラックス作用があります
・ハーブ・セージの効能や育て方などまとめ。初心者必見です
・ハーブ・バジルの効能や育て方や栽培などまとめ。ハーブ講師が教えます
・ワイルドストロベリー徹底解説。育て方や増やし方や効能など
・ラベンダーの効能や増やし方や剪定など徹底解説!